081. 誕生日


「ランスっ! ランスっ!」
「陛下?」
 人目を忍ぶように、国王ジェラルドはランスに呼びかける。
 彼は国王の側近であり、決してこうして呼ばれることが、人目を憚るわけではない。
 ランスも自然と周囲を気にしつつ、ジェラルドの傍へと向かう。
「ランス、あの子は今、何が好きなんだ? まだ12歳だが、ぬいぐるみはもういらないだろうな、アクセサリーか? 服か? 靴か?」
 一瞬何を言っているのかと思ったが、ジェラルドの娘であるフェリアの誕生日プレゼントだと察して、複雑な笑みを浮かべる。
 正式な王女であるイレイザの誕生日と、隠し子であるフェリアの誕生日は1年と離れていない。
 先日行われたイレイザへのプレゼントは、王妃と侍女たちが選んでいたはずだ。
 彼自身、王妃の小型版のようにさえ見えるイレイザより、フェリアの方に肩入れしているので、口を出せることではない。
 だが、二人とも実の娘なのだ。
 公然と娘として認められない、父親が誰かわからないことで不遇を強いている、母親であるリディスがすでに亡くなっている、などなど、ジェラルドとしては贖罪の気持ちも持っているのかもしれない。
 それでも、釈然としない気持ちがわき起こるのは止められなかった。


 2015年11月05日

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