042. 早いね
「あれー? エラニー、これ、キツい」
衣替えの最中に勝手に引っ張り出したセーターを着込んだフェリアは、不思議そうに両手を広げた。
「あらあら。フェリアお嬢様も背がお伸びになったのえすね」
一方、エラニーは嬉しそうに笑う。
「新しいセーターが必要でございますね」
「……自分じゃわかんない」
自分の頭に左手をかざし、フェリアは首を傾げる。
「急に伸びるものではありませんからね。うちのヴァイスたちもそうですよ」
「ふーん」
2人の会話をやや離れた小テーブルの上で危機ながら、フェリックはそっと自分の身体を見回す。
彼の身体はフェリアと出会ったときと、ほぼ同じ。人間とは成長の速度が異なるからだ。
いつぞや自分で切ってサンバラにしてしまったフェリアの髪も、いつの間にかすっかり伸びている。
「早いね……早すぎるよ」
このまま時が過ぎれば、フェリアはどんどん大人になり、彼らの感覚からすれば「すぐに」年老いて死んでしまうだろう。
彼を置いて。
「ん? フェイ、なんか言った?」
彼の呟きを聞きとがめたか、フェリアが近づいてくる。
「ううん」
「そぉ?」
「おやつ、まだかな〜って思っただけ」
「じゃあ、フェイのお腹の音かな?」
無邪気に笑うフェリアに、身体の中でどこかがよじれるような嫌な気持ちを抑え込み、フェリックも笑って見せた。
2005.08.24.
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