037. 館
「んー」
朝、フェリックは目を覚ますと大きく伸びをする。
別段、身体が強張っているとかそういうことでもないのだが、単なる癖だ。
「はわ〜」
だが、今日は格別の日だった。
昨日の朝までは床に置かれた籠の中で目を覚ましていたのだが、今日からは自分の部屋のベッドの中で目を覚ますことができるのだ。
「へへ」
思わず周りを見回してにやけてしまう。
家具などは無理だったものの、彼が選んだ壁紙やカーテンが下がっているのが何とも言えず嬉しい。
フェリアが、ドールハウスをフェリックの家として改造してくれたのだ。
もちろん、ベッドカバーなどを作ったのはフェリアの世話係のエラニーだが、お願いしてくれたことが嬉しい。
昨夜は一人あちらこちらを探検して過ごした。
彼の身体は人間の掌に乗るほどに小さく、他人を招くことができないのは辛いが、それでも彼の家、館とも言えるものがあることがとても誇らしいフェリックだった。
2005.08.14
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